バイト先に行ったら「今日はひとがいるから来なくて良い」と告げられ行き場を失いました。花でも買おうかなあと考えて、買わなかった。コーヒーでも飲もうと思っただけで飲まなかった。きのう冷たくあしらってしまった恋人に会いたくなった。きっと怒らせてしまっただろう。ほんとうに行き場を失ったらわたしはその時この世にいないのでそんな大層な言い方をしてはいけないんです。結局部屋に戻りました。先週は病院に行って仕事を休んでしまったので休日出勤をどこかでしなければならないのですが、さすがに今日そういう気にはならなかった。今月末に友人の結婚式があります。正直に言って行きたくありません。他人の目一杯の幸せをこの目で見ると、泣けてきてしまいそうだからです。それは妬みとか僻み(一番きらいな感情。世から消えてしまえと思っている)ではなく、そういうことではなく、心からおめでとうと確かに言いたいのだけれども、父の命日の翌日、妹の腹に宿り死んだ赤ん坊のことを思うとどうにも「おめでとう」なんていう気にはなれません。平成の最後に、生きることができなかった命、を見ました。このことがなくてもわたしは友人の結婚式に行きたくないのです。もう彼女らとも会いたくない、本音では。なにかをされたわけでもないし、嫌いなわけでもないのだけれど、彼女らが知らない悪夢をわたしが今でも抱えてしまっているということ、それは植えつけられてしまって、彼女らと対面することによってその悪夢が、埋まっていたそれが顔を出す。それが怖い。とある教師にわたしは半ば虐待のようなことをされていて、そいつがきっとそこにはいるのです。わたしは彼に対し、復讐として、もう一切今後挨拶もしなければ姿も見せず、存在しなかったことにしたい、と思っていました。けれどどこかでもうそういうことをやめたいとも思っていて、だから結婚式には行こうと決意したのだけれど、やっぱり行くのが嫌になってしまいました。結婚結婚と騒ぎ立てる女の子たちの気持ちが理解できない。近くにいてほしくない。

幸せは誰にも見えないところで小さくて良い。わたしは祈りに近い気持ちで、死んでしまった者たちに何かを囁きたい。費やしたい。ほんとうに何もできなかったんです。ほんとうに、心の優しい人たちばかりが、なにも知らない者だけが傷ついて陥れられて、そういう人たちの上を自分はただ歩いているだけなんです。考えることをやめたら人間じゃなくなる。

 

もう夕方4時になりました。チューリップが自然と光の方向へと頭を向けています。もうすぐ枯れてしまう彼女たちは、今、必死に、光を求めているように見えます。

 

まるごと自分を飲み込んだらば何かから解放されるだろうか。 あの子もわたしも全部ごちゃ混ぜにして胎内のなかで眠る。 守りたいし守られたい。 わたしは女だから守りたい、わたしは女だから守ることができるはずだった。 けれど女であったために妹は傷ついて、女であったためにあの子は死んでしまったのだ。 胎内のなかで体が形成されるまえの、ただの生命。 生命。 生命、わたしを食べて。 すべての入り口出口を塞いで、 もうなにも生み出さないために。 もう誰も傷つけないために。

 

変な夢をみたあとに息が止まりそうな出来事が起きてしまった。 文字通り息が止まってしまえば良かったものの、それはわたしではなく、罪のない小さな命だった。 それについて考えなくてはいけないけれど、考えたところで何ができるわけでもない。 変わったことといえば、もう全てにたいして気持ちが冷めてしまっていること。 今日も仕事へ行ったし、明日も仕事へ行くだろう。 精神が崩れて家から出れないことはない。 でも、誰とも会いたくなければこんなもの、こんな現実は全部壊れてしまえばいいと思っている。 いったい誰と何を見ていけば良いんだろう。 ますますひとりになれる。 これでますますひとりになることができる。 誰も近づいてこないでほしい。

 

昨日、わたしの恋人はわたしの側に居なかった。そういうことだ。決定的な事実。いくらの言葉より、そこにいなかったという事実がどれほど大きなことだったのか、わかっていない。

明日会おうね、など言われてもわたしはもう、あなたを遠くにしか見ることができない。

 

誰も必要としないで生きていきたい。

誰も必要としないまま生きてはいけない。

 

 

 

さいきん奇妙な夢ばかり見る。ある広いホテルのエレベーターのなかに鏡がある。そこに自分の姿と、顔のない男が映り込んでいる。おそろしくなってエレベータをあとにし、赤い絨毯の上をどこまでも駆けて行くと螺旋階段がある。急いで降ろうとするのに動きが鈍くなっていて、先に進めない。そうこうしている間に顔のない男がゆっくりとこちらへ向かってくる。気は急いでいるのに体がついてこない。男が近づいてくるたびに恐怖が増してドキドキする。気が付いたら夢は終わっていて、起きるとまだ朝にもなっていない。次に見た夢は蛇の夢。どうやら森のなかにいるようで、周りが木に囲まれていた。歩いて行くと小さな小川があり、そこに足を浸けて歩いていると黒い蛇が1匹2匹3匹と現れる。水のなかにいる蛇は動かずにただただ息を潜め、川の動きとともに微妙に体を揺らしていた。森の中の空気は澄んでいて、木々も美しかった。けれど蛇は黒く、真っ黒で、そのうち3匹の体が繋がり一つの異なった生物に変化していくようだった。わたしはそれがおそろしく、足がすくんで歩けなくなる。そういうところで目が覚めた。それでもまだ4時前。耳鳴りがする。窓を開けて空気を入れ替えた。同じ時間に悪夢にうなされ目覚めたひとはこの世にたくさんいるのだろう。隣にひとがいなくてよかった。