カレーを煮込み続けて二時間。
カサが減ったから水を足しましょうと水を足し、そのままかきまぜ続けていたらば三時間が経過していた。下着姿で台所に立ち、腹を空かせているのにも関わらず、混ぜるという行為をまるで何かの儀式、呪いのように永遠と続けていた。
そのうち全身の毛穴という毛穴から汗が吹き出し、しまいには一体何を目的にカレーをかき混ぜているのだかが分からなくなってくる。私たちはこれを食べたくて作っているのか、それともただただかき混ぜたいがためにかき混ぜているのか、それとも汗をかきたくてわざわざここにずっと立っているのか、暑さで意識も朦朧とし、全てがよくわからなくなってきた。気づいた時にはそこにいたはずのジャガイモ、人参などは全て消滅し(溶けた)、最終的にはぜんぶが混ざり合ってしまったのだった。
 
「僕はカレー屋を開いたら 、店の名前は『カレーハウス 渦』にする」
 
「渦ですか」
 
「うん。カレーの具は全部調和して一つの味になってるでしょ。混ぜてると中心に渦が出来て...カレーは凄いよ。みんなで一つだ」
 
「それはいいけど、もういいんじゃないの」
 
「あ、カサが減った。水たす?」
 
永遠にカレーが食べられず、「かき混ぜ続ける」という呪いをかけられた男女の話。