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古本屋で本を漁っていたら突然大雨が降り出した。とっくに買う本は決まっていたけど外に出るのが億劫で、本を探すふりをして雨音が静まるのを待ってみた。でも一向に収まる気配がなく、仕方がないのでレジへ行き、その足ですぐさま向かい側の喫茶店に避難する。店内の1階はほとんど人で埋め尽くされていたので2階へ行き、そして8人掛けくらいのテーブルに案内されるもどこに座るべきか一瞬ためらった。

このテーブルには年の離れた男女も座っていたので、彼らから一番離れた席を選ぶ。

その他二人掛けの席には若い女の子が座っていた。みんな可愛い洋服を着ていて、そして全員が似たようなお化粧をしていた。だから皆顔が似ている。バイトが嫌だとか、そんな話をあっちの席でもこっちの席でもしていたので、話題までも皆同じのようだった。若い子と一緒に働くのはしんどそうだな、となんとなく思う。年下の女の子とやらが、実は一番苦手なのだ。

 

後ろに窓があったので、外の様子を窺う。一瞬外に出た時がピークだったようで、店に着いた途端雨は弱まっていた。もう少し粘ってあの店に居ればよかった、と思いながら久しぶりにホットコーヒーを飲み、それから買った本を読んだりしていたけれど集中できず途中でやめた。向かい側の男女の会話が嫌でも耳に入ってきたからだ。妙な会話をしている。どんな関係性なのか、ちょっと気になり始めてしまった。男性は女の子に貢いでおり、女の子はその代わりに時間を彼に与えているようだった。何かの会話の途中で「たまには僕にもお金を使ってよ」と男が言うと、「そんなこと言う?その代わりにこうして会って、時間使ってるじゃん」と女の子が答え、男は狼狽えたように笑っていたのでそういうことなんだと思う。男、何だか切ない。けど顔が幸せそうだったし、女の子もつっけんどんな態度ながらも楽しそうだった。好きでもない相手とずっとお喋りするのはさぞかし辛いだろう。むしろ女の子のほうが夢中に話をしていたので、まんざらでもなさそうだ。そのうち「ディズニーランドとディズニーシー、どっちが良い?」という夢のような会話を始め、私も勝手にどっちが良いだろうかと考えて、ディズニーランドに行きたいなと思った。 彼らはディズニーシーに行くらしい。

・・・・。

ふたりは席を立っていなくなった。相変わらず似たような顔をした女の子たちはキャピキャピ楽しそうにお喋りを続けていた。外を見ると雨は止んでおり、8人掛けのテーブルにひとりで座るのもあんまり落ち着かず、店を出る。

部屋の時計が止まってしまったため、電池を買う。16時25分あたりで動かなくなっていたけど、ようやくカチカチと音を鳴らすようになった。振り子の部分は壊れて取れてしまった。振り子が気に入って買ったのに、直す方法がわからない。時計が動いて、明日にどんどん近づいていく。明後日にも明々後日にも近づいていく。

 

恐ろしい。